「自律神経が乱れている」「自律神経を整えましょう」。ここ数年、そんな言葉を耳にする機会が増えました。Podcast「RePro RADIO」第18回のテーマは、その自律神経です。
ReProでも、測定機器を通して自律神経の状態をひとつの指標として測定しています。ただ、「測って何がわかるの?」と思う方も多いはずです。だから今回は、整える方法を話す前に、まず自律神経そのものを知る回にしたい。代表の古賀はそう切り出しました。二部構成の前編です。
体づくりの背景で、ずっと働き続けている仕組み
体づくりというと、体重や筋肉量、体を絞ることに目が向きがちです。でも、私たちの体はそれだけでできているわけではありません。どれだけトレーニングをしていても、どれだけ食事に気をつけていても、その背景には常に体を調整してくれるシステムがある。そのひとつが自律神経です。
自律神経は、文字通り「自律している神経」。自分の意思とは関係なく、体の状態を調節し続けてくれる神経のことです。
- このラジオを聴いている間も、心臓は勝手に動いている
- 意識しなくても呼吸をしている
- 食べたものを消化している
- 体温をある程度一定に保とうとしている
古賀は「寝る前に、よし今日も心臓を、なんてやってはいられないじゃないですか」と笑います。私たちが何も意識していない間も、24時間ずっと調整が行われている。まさに縁の下の力持ちのような存在です。
「緊張とリラックス」だけでは、少し雑な解釈
自律神経は大きく分けて、交感神経と副交感神経のふたつがあります。よく「交感神経は緊張や興奮、副交感神経はリラックス」と言われますよね。古賀いわく、これは間違いではないけれど、少しだけ雑な解釈だといいます。
ざっくり言うと、交感神経は体を活動や、外の環境への対応に向けるもの。副交感神経は休息や回復、そして体の維持に関わるもの、というイメージです。
運動をするときや、緊張する場面。こうしたときには交感神経の働きが高まります。一方で、食事を消化するときや、眠るとき。こうした場面では副交感神経の働きが重要になってきます。「リラックス」という一語だけで捉えてしまうと、副交感神経が担っている「体の維持」という役割が見えにくくなってしまう、というわけです。
体は、自分の中だけで完結していない
ここで古賀が持ち出したのが、高校時代の先生の話でした。授業中、教室にバチバチに声を響かせていた世界史の先生。もう一方は、終始ローントーンで穏やかだった数学の先生で、気づいたら教室のほとんどが寝ていたそうです。
ただし古賀は、ここできちんと釘を刺します。「もちろん、あの先生が交感神経優位で、あの先生が副交感神経優位だったかは分かりません」。人の印象と自律神経の状態を、そのまま結びつけて語ることはできないからです。
そのうえで、こう続けます。声の大きさやトーンといった周囲からの刺激によって、私たちの覚醒レベルが変わることはある。つまり、体は自分の中だけで完結しているわけではないということです。周りの環境から情報を受け取りながら、今どれくらい活動するべきかを、体は常に調整している。そういう見方ができます。
出発地点が違う、ふたつのネットワーク
面白いのは、この交感神経と副交感神経が、体の中での出発地点も違うという点です。
- 交感神経は、主に脊髄の胸から腰のあたりから出て、背骨の近くを経由しながら全身の臓器へつながっていく
- 副交感神経は、脳や骨盤のあたりから出ている。特に有名なのが、脳から心臓や内臓へ伸びている迷走神経
もっとも古賀は「ここは細かく覚えなくて大丈夫です」と言います。大切なのは、活動するためのネットワークと、休んだり回復したりするためのネットワークがあって、状況に応じて常に働いているということ。この一点だけ押さえておけば十分だ、という話でした。
「交感神経を抑えて副交感神経を高める」でもない
「交感神経が高いとダメで、副交感神経を高めましょう」。そんな話を聞いたことがある方もいるかもしれません。これも実は少し違う、と古賀は言います。
もし交感神経が働かなかったら、朝起きられない。集中できない。運動もできない。交感神経もまた、生きていくために必要不可欠なものだからです。
大切なのは、どちらが強いかではありません。頑張れるときには頑張れて、休むときには休める。この力こそが大事なのだと、古賀は普段から伝えているそうです。
「自律神経が乱れる」をどう考えるか
では、よく耳にする「自律神経が乱れる」という表現は何なのか。まず古賀は、これは医学的な診断名ではないと前置きします。そのうえで、言葉のイメージとして分かりやすい状態を挙げました。
- ストレスの原因が終わっているのに、体が緊張したままでいる
- 休んでいるのに、回復した感じがしない
- 寝る時間になっても頭が切り替わらず、考えがぐるぐるしてしまう
こうした、環境が変わっても体がうまく次のモードへ移れない状態。それが「乱れている」という言葉のイメージとして、つかみやすいのではないか、という説明でした。
ただし、と古賀は続けます。これを「体が壊れている」と決めつけないことが大事だと。もしかしたら体は、今の環境に適応しようと一生懸命働き続けているだけかもしれない。体には体なりの理由がある。だから「乱れているから直さなきゃ」ではなく、「自分の体は今、何に対応しているんだろう」という視点を持ってみる。
なんで今こんなに心臓がバクバクしているんだろう。逆に、なんでこんなにずっと体が動かないんだろう。そうやって自分の体と対話してあげることが大事になってくる、という話でした。
まとめ
第18回の前編で語られたことを整理すると、次のようになります。
- 自律神経は、自分の意思とは関係なく24時間ずっと体を調節し続けてくれている
- 交感神経は、体を活動や外の環境への対応に向ける神経。「緊張・興奮」だけではない
- 副交感神経は、休息や回復に加えて、体の維持にも関わる神経
- 交感神経も生きていくために必要不可欠で、抑えればいいというものではない
- 「自律神経が乱れる」は医学的な診断名ではなく、次のモードへうまく移れない状態のイメージ
自律神経は、ただ整えるものではありません。常に体を調整してくれるシステムです。だからこそ、交感神経を抑えることや副交感神経を高めることに重点を置きすぎるよりも、必要なときに活動して、必要なときに回復できること。つまり切り替えられることが大事だ、というのが前編の結論でした。
後編では、その切り替える力をどう育てていくのか、自律神経との上手な付き合い方について話していきます。
この回の内容は、Podcast「RePro RADIO」第18回でお聴きいただけます。