サプリメントは種類が本当にたくさんあります。SNSを見れば、筋トレ向けのものだけでなく「これを飲めば痩せる」といった情報もあふれています。
今回は、普段から筋トレを続けているゲストMCとの対話形式で、サプリメントとはそもそも何なのかを科学的に掘り下げていきます。前編では、何を飲むかの前に押さえておきたい考え方を整理します。
サプリメントは「補助」。食事の代わりではない
大前提として、サプリメント(supplement)は英語で補助という意味です。あくまで補助であり、食事の代わりではありません。ここはまず強調しておきたいところです。
サプリだけ摂っておけば食事は要らない、そのほうが効率的だ、という意見を見かけることがあります。けれども基本は、タンパク質なら肉や魚、乳製品、ビタミンやミネラルなら野菜や海藻といった食事から必要な栄養素を摂ることです。そのうえで、食事だけでは必要量を確保しにくい栄養素がある場合や、忙しくて食事で摂るのが難しい場合にサプリメントを使う。この順番を基本と考えてください。
ゲストからは「栄養素が同じなら、サプリでも食事でも一緒ではないか」という質問がありました。そう考えている人は多いのですが、食事の目的は栄養素を体に入れることだけではありません。
食べるときには、噛む、香りを感じる、味わう、飲み込むといった、いろいろな感覚が体に入ってきます。咀嚼が自律神経の活動に影響することも研究されています。もちろん「噛めば副交感神経が上がる」と単純化できる話ではありません。それでも食事には、栄養素以外にも体に入ってくる重要な情報がたくさんあり、たとえば体が吸収する準備をしてくれるといった働きもあります。
栄養素だけをそのまま流し込むのとでは、効果が変わってくることがあり得ます。ビタミン剤を飲めば野菜を食べなくていい、プロテインを飲めば肉や魚を食べなくていい、という話ではないということです。
体験談と研究の積み重ねは、重みが違う
では、サプリは必要ない、飲まないほうがいいのかというと、それも極端です。エビデンスがしっかりしていて、目的が明確であれば、かなり有効になってくるものもあります。
RePro では、いつも科学的にという姿勢を大切にしています。たとえば「友達があれを飲んだら調子が良かった」というおすすめは、いわば母数が1の話です。何十本、何百本という研究をまとめたメタ解析とは、意味が違ってきます。
研究にもいろいろな種類があります。
- 個人の体験談
- 観察研究
- ランダム化比較試験
- 複数の研究をまとめたシステマティックレビュー
研究のデザインによって、どの程度信頼できる情報なのかを考えます。メタ解析だから絶対に正しい、というわけではありません。それでも、本当に効果があるのかを見るなら研究の積み重ねを見ることが、サプリメントを選ぶうえでも大切な視点になると考えています。
研究が積み重なっているサプリと、表示の見方
スポーツ栄養の分野では、オーストラリアの国立スポーツ研究所(AIS)が、サプリメントをエビデンスや安全性などから分類しています。そのなかで、クレアチン、カフェイン、ナトリウム、ベータアラニンといったものは、しっかりとエビデンスが確立されているグループAに位置づけられています。ちゃんと研究されていて、目的によって有効なものもあるということです。
一方で、筋トレをする人がよく飲んでいるEAAなどは、ゴールドスタンダードとは言われていないものだったりもします。
代表例として、クレアチンを取り上げます。クレアチンは筋肉のエネルギー供給に関わる物質で、短距離走のような短時間・高強度の運動や、筋力・筋量の向上をサポートする目的で、非常に多く研究されています。
面白いのは、クレアチンにも種類があることです。研究で圧倒的に使われているのはクレアチンモノハイドレート。これはクレアチンの形の名前で、「モノ」は一つという意味です。水分子を一つ含んだ形、というのが直訳になります。一般に出回っているものもこの形が多いのですが、クレアチンが入っていれば何でもいいのではなく、研究で実際に使われてきた形を選ぶという考え方も大切です。
商品によっては「クレアチン」とだけ書かれているものもあります。その場合はほぼモノハイドレートと考えて間違いないのですが、クレアチンを少ししか含んでいなくてもクレアチンと名乗れることがあります。一般の方が選ぶなら、こうした表示を見ることが大切です。とはいえ、正直なところ見ただけでは分かりにくいものです。パッケージの写真を撮ってAIに聞いてみるのも、今の時代だからこそできる良い方法です。
プロテインは、タンパク質を手軽に補給するための食品
プロテインは魔法のサプリではありません。タンパク質を手軽に補給するための食品です。食事で十分なタンパク質を摂れているなら、絶対に必要というわけではありません。
ただ、トレーニングする人には一般的に体重の1.5倍くらいのタンパク質が必要とされていて、これを食事だけで摂るのは、実際に測ってみると難しいものです。ゲストの場合は、一度に摂れる量には上限があり、毎回の食事に詰め込むのは無理があるため、間食やトレーニング後に1日2回プロテインを飲んでいます。これはとても良い摂り方です。
それでも、あくまで補助です。まずは食事、という順番は変わりません。
クレアチンローディングは必須ではない
今回、ゲストが一番聞きたかったのがクレアチンローディングです。周りがやっているから自分もやってみた、でも本当に必要なのか。筋トレを続けている立場からの率直な疑問でした。
結論から言うと、ローディングは必須ではありません。ローディングの目的は、最終的な効果を強くすることではなく、筋肉の中にクレアチンを早く満たすことです。
一般的なローディングの例では、1日に20グラムぐらいを1週間ぐらい摂り、その後は1日3から5グラム程度にします。一方で、最初から1日3から5グラムを継続しても、時間をかけて筋肉内のクレアチンを高めていくことができます。ローディングをするかどうかで最終的な目的が大きく変わるのではなく、どれくらい早く筋肉内のクレアチンを飽和させたいかの違いです。
- 普通に筋トレしている人なら、1日3から5グラムを継続する方法で十分
- 来週試合があるので、できるだけ早く筋肉内のクレアチンを高めたい、といった状況なら、ローディングを検討してもよい
また、ローディングをすると一時的に体重が増えたり、胃腸の不快感が出たりする人も結構います。そのリスクも考えると、長期的にトレーニングしていくなら、毎日コツコツ摂ることで十分だと考えています。
まずはトレーニングの強度を上げる、睡眠を確保するといった基本的なことを最優先に考えてもらえればと思います。
まとめ:サプリを選ぶ3ステップ
最後に、サプリを選ぶときの手順を整理します。
- 食事:食事で必要な栄養を確保する。これが最優先です
- 目的:何のために飲むのかを明確にする。筋肥大なのか、パフォーマンスアップなのか。ビタミンや鉄などの欠乏対策も、目的の一例です
- エビデンス:その目的に対して本当に研究されているのかを確かめる。さらに、どの成分なのか、どの形態なのか、どのくらいの量が適正なのかまで見る
自分の体に直接入るものですし、お金もかかります。AIに聞く方法もありますが、出てくる情報が正しいかどうかも含めて、ちゃんと見て選んでいきましょう。
サプリメントは、なんとなく健康に良さそうだから飲むものではありません。必要なものを、必要な人が、必要な量だけ補う。ここに意味があります。何を飲むかよりも、なぜ飲むのか。食事を整え、運動して、睡眠をしっかり確保し、そのうえで必要ならサプリメントを使う。サプリメントは健康の土台ではなく、土台を補強していく材料のようなものです。
後編では、では結局何を飲めばいいのかを、エビデンスをもとに掘り下げていきます。
この回の内容は、Podcast「RePro RADIO」第21回でお聴きいただけます。