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カフェイン・BCAA・鉄・ビタミンD。エビデンスで選ぶサプリメント【後編】

カフェイン・BCAA・鉄・ビタミンD。エビデンスで選ぶサプリメント【後編】

前編では、サプリメントは食事の代わりではなく「補助」であること、そして選ぶときは食事・目的・エビデンスの順で考えることをお話ししました。後編では、では具体的にどんなサプリメントを選べばいいのかを、目的別に掘り下げていきます。

今回も、ゲストMCとの対話形式です。視点は大きく2つ。筋トレをしている人に向けてと、RePro のクライアントさんにも多い女性に向けてです。

おさらい:クレアチンとプロテイン

クレアチンとプロテインは、複数の研究やメタ分析で有効性が支持されていて、科学的根拠が比較的豊富なものです。前編で詳しく扱ったので、ここでは簡単に振り返ります。

  • クレアチン:高重量のスクワットやベンチプレス、短距離走など、強い力を発揮するときのエネルギー供給を支えるもの。一般的にはクレアチンモノハイドレートを1日3〜5g程度、継続して摂る方法が用いられます
  • プロテイン:筋肉の材料になるタンパク質を手軽に補給するための食品。筋トレをしている人は、食事も含めて1日あたり体重1kgにつき1.4〜2gを目安に考えるとよいでしょう

ここでゲストから質問がありました。トレーニング後30分以内にプロテインを飲みなさい、という「ゴールデンタイム」の話を学生時代に聞いてきたけれど、トレーニング前に飲むのはありなのか、というものです。

答えは、トレーニング前でも全然ありです。最近の知見では、トレーニング後すぐに摂らなければいけない、という考え方はあまりなく、むしろ1日の総摂取量のほうが大切です。筋タンパク合成はトレーニング後24〜48時間しっかり続くことが分かっています。毎日、体重1kgあたり約1.4〜2gを総量でしっかり摂れていれば、どのタイミングで摂ってもそれほど変わらない、と捉えてもらって大丈夫です。

カフェインは運動パフォーマンスの研究が進んでいる成分

今回新たに取り上げたいのがカフェインです。カフェインは運動パフォーマンスを高めるのではないかと研究が重ねられ、データが溜まってきた成分です。脳や中枢神経系に作用することで、運動中の疲労感を軽減したり、持久力や一部の筋力系パフォーマンスを高めたりする可能性があります。いろいろな学会でも運動パフォーマンスへの効果が整理されていて、クレアチンと同じように、スポーツ栄養学の分野できちんと研究されている成分の一つです。

カフェインというとコーヒーを思い浮かべる人が多いと思いますが、コーヒーから摂っても問題ありません。必ず専用のサプリを使う必要はないのです。

ただし、注意したいのは、摂れば摂るほど効果が高まるわけではないということです。

  • 効果には個人差があり、動悸や不安感が出る人もいます
  • 睡眠に関わります。トレーニング中のパフォーマンスが上がっても、その後に眠れなくなると、かえって回復に悪影響を与える可能性があります

私自身、夜中にトレーニングすることが多いのですが、そのときはカフェインを入れません。効果が持続して眠れなくなってしまうことがあるからです。逆に昼にトレーニングするときは、しっかりカフェインを入れることもあります。状況に応じて、必要なときに活用する選択肢の一つとして考えるとよいと思います。

また、カフェインで覚醒している感覚やパフォーマンスが上がる感覚を持つ人もいれば、まったく分からないという人もいます。今回のゲストは、コーヒーを飲んでも数分後には眠れてしまう「分からない派」でした。感じ方にも個人差があるということです。

エナジードリンクとコーヒー、「痩せる」の話

ジムでは、エナジードリンクを飲みながらトレーニングしている人もよく見かけます。これも選択肢としてはありです。ただ、コーヒーと違って、カロリーや余分な糖質が一緒についてきてしまうことがあります。私自身、エナジードリンクを入れるときはゼロカロリーのものにしています。カフェインだけを摂りたいのであれば、カロリーがあまりないコーヒーのほうが、余分なカロリーを摂らずに済むという点で向いています。

もう一つよく聞くのが「コーヒーを飲むと脂肪燃焼効果が期待できて痩せやすい」という話です。これは、話が一人歩きしている印象があります。エネルギー消費が少し増えたり、脂肪の利用が促進されたりする可能性がある、という程度で、大きく効くわけではありません。

大元は、やはりトータルの摂取カロリーです。摂取カロリーと消費カロリーのバランス、そしてきちんと運動しているかどうか。こちらを大事にしてほしいと考えています。「このサプリを摂ったら痩せる」という枝葉の部分に飛びつき、木を見て森を見ずにならないようにしましょう。

RePro では、何を摂るかよりも、何を省くかのほうが大事だと考えています。おしゃれは引き算、と言われるのと同じです。どんどん足していくと、やることが増えて億劫になり、続かなくなって、結果的にトレーニングをやめてしまうことにもつながります。大事なのは、いかにシンプルにして継続できるかです。

BCAAとEAAは本当に必要か

トレーニング中にBCAAやEAAを飲んでいる人もよく見かけます。今回のゲストも飲んでいる一人です。

まず正体を整理します。どちらも、体内で十分に合成できない必須アミノ酸です。必須アミノ酸をバランスよく含んだものが、タンパク質でありプロテインです。

  • BCAA:9種類ある必須アミノ酸のうち、バリン・ロイシン・イソロイシンの3種類
  • EAA:9種類の必須アミノ酸すべてを含むもの。厳密には違いますが、タンパク質をより分解したもの、ほぼプロテインに近いもの、というイメージで構いません

必須アミノ酸のなかでもロイシンが特に筋タンパク合成に関わるのではないかと言われ、それを含むBCAAが登場した経緯があります。けれども、実際に筋肉を作るには他の必須アミノ酸も必要です。BCAAを摂取することで長期的な筋肥大が大きく促進されるとは限らない、というのが結論です。

では、9種類すべてを含むEAAなら良いのか。摂取によって筋タンパク合成が刺激されることには科学的根拠があります。ただし、一時的に合成が高まることと、長期的に筋肉が増えることは同じではない点に注意が必要です。普段から十分にタンパク質を摂れている人がEAAを追加しても、大きなメリットが得られるとは限りません。

一時的に合成を高めるという点では、BCAAやEAAがまったく意味のないもの、というわけではありません。食事がなかなか摂れずタンパク質が不足している場合は、まずプロテインを活用することが一つの方法です。そのうえで、タンパク質をきちんと確保できていれば、この2つを追加する優先度はそれほど高くないと考えています。

入れても構いませんが、お金がかかります。わざわざお金を使うなら、休養をしっかりとる、食事に使うといったほうが、筋肥大への貢献度は高くなります。BCAAやEAAで変わるのは、トップボディビルダーのわずかな差ぐらいのレベルだと考えています。一般のトレーニーであれば、基本は食事、補助としてプロテイン、で十分です。

女性が不足に注意したい栄養素:鉄分

ここからは女性に向けて、特に不足に注意したい栄養素を取り上げます。まずは鉄分です。

鉄は赤血球に含まれるヘモグロビンの材料になり、全身に酸素を運ぶうえで重要な役割を担っています。鉄が不足すると、疲れやすくなったり、息切れが出たり、貧血になったりすることがあります。

女性は月経で鉄を失います。そのため、不足のリスクを考えると鉄分はとても大切です。加えて、次のような人は不足しがちなので、確認する価値があります。

  • 女性アスリートなど、運動量が多い人
  • 食事制限をしている人。過度な痩せ傾向は最近特に顕著だと感じていて、鉄分が足りていない人は多い印象です

では、みんな鉄分のサプリを飲めばいいのかというと、そこにも注意が必要です。鉄分は不足している人にとっては重要な栄養素ですが、誰にでも当てはまるわけではありません。鉄分は過剰になると健康上の問題もあるため、高用量のサプリメントを取り続けることは、人によっては避けたいところです。

疲れやすい、貧血気味だと感じる人は、一度医療機関で血液検査を受け、ヘモグロビンやフェリチンの値を確認したうえで、自分に本当に必要かどうかを判断することが大切です。気になる症状がある場合は、自己判断せずに医師に相談してください。

摂り方については、不足したときにスポットで摂るよりも、日常的に1日あたりの推奨量を摂っておくことが基本です。推奨量は月経の有無でも違いますが、月経がある人ではおおよそ1日10mgくらいが目安です。食事記録のアプリに食材を入れてみると、鉄がどのくらい足りていないかが分かるので、10mgを一つの目安にしてみてください。

ビタミンD:日光を浴びない生活で不足しやすい

もう一つがビタミンDです。カルシウムが骨を作るというイメージを持つ人は多いと思います。そのカルシウムを体内で適切に利用するための補助として、ビタミンDが必要です。カルシウムの吸収を助ける成分です。

ビタミンDは日光を浴びることで作られるビタミンです。ところが最近は、美容の関係もあって、日焼け止めをしっかり塗り、なるべく屋内で過ごすという女性が増えてきました。そのためビタミンDの不足が問題になっていて、摂取が足りていない人は多いと感じています。

サプリで補うのは、選択肢として十分ありです。ただし、これも摂れば摂るほど健康になるものではありません。過剰に摂取すると、血液のカルシウム濃度が高くなるなどの問題があります。

  • まずは、ビタミンDを含む魚や卵から摂ることを意識する
  • 日光を浴びる機会を増やすなど、生活習慣を見直す
  • それでも日光を浴びられない、魚も卵もあまり摂れないという人は、サプリを選択肢に入れる

どのくらい日光を浴びればいいのかは、時間帯や季節、肌の露出面積によって体内で作られる量が大きく変わります。以前に見た文献では、7月や8月の正午なら5分ほど。これが12月になると20分、時間帯が朝なら100分ほどかかることもあります。着ているものの厚さなども関わるので、一概には言えません。ゲストは日中デスクワークのため、昼休みにご飯を食べたあと15〜20分ほど散歩して、意図的に日光を浴びるようにしています。

まとめ:全部揃えるのではなく、自分に必要なものを選ぶ

前編と後編を通していろいろなサプリメントを取り上げてきましたが、これらを全部揃えればいいというわけではありません。

  • 食事が優先:タンパク質など必要な栄養素は、まず食事から確保する
  • 不足を見える化する:自分にどの栄養素が足りていないのかを調べ、必要に応じて自分に合わせて摂る
  • 筋トレは負荷と休養:サプリよりも、栄養と十分な休養、そしてトレーニング中の負荷が圧倒的に大切

トレーニング中にスマホばかり見て負荷が足りていないのに、BCAAは頑張って摂っている。そうならないようにしてほしいと思います。何事も基本の原則が一番大切です。生活習慣を整えたうえで、自分に不足しているものを選んでいきましょう。

SNSでは「簡単に痩せます」「これがすごくいい」といった情報に、多くの人が飛びつきがちです。けれども、知名度があることと、科学的な根拠が十分にあることは完全に別です。何を目的に摂るのか、自分に不足しているものは何か、安全性は担保されているか。こうした視点を持って選ぶことが一番大事です。

「最近話題のこれ、どうですか」という質問は本当に何度もいただきます。そういうときは、まずその人の食生活や生活習慣を見ます。ほぼ100%、それ以外のところに要因があるので、まずはそちらにフォーカスしてほしいと考えています。

サプリメントは、たくさん摂らなくて大丈夫です。何を飲むかよりも、なぜ飲むのか。その視点を持って付き合っていきましょう。気になることがあれば、ポッドキャストやInstagramのコメントで教えてください。番組でお答えする機会を作っていきます。

この回の内容は、Podcast「RePro RADIO」第22回でお聴きいただけます。

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